抄録
仙腸関節炎を初発症状とした感染性心内膜炎(IE)の1例を経験した。
患者は18歳女性。覚醒剤の使用開始から2ヵ月後に40℃の発熱を認め,3ヵ月後に著しい臀部痛のため起立不能となり複数の病院で抗生物質治療を受けた。5ヵ月後に前医によって腰部CT検査で仙腸関節の炎症像,血液培養にてγ-Streptococcusを認め,化膿性仙腸関節炎による敗血症,多臓器不全と診断され当院へ転院となった。来院時は全身性炎症反応症候群,うっ血性心不全,急性腎不全を呈し,心臓超音波検査では三尖弁の疣贅形成と閉鎖不全(TR)II°を認めた。われわれはIEによる敗血症と診断しペニシリンG大量療法を開始した。約1ヵ月で検査所見,自覚症状は改善し,三尖弁形成術を施行され入院5ヵ月後に退院となった。
IEの25~44%に筋骨格症状を認めるが,本症例のような仙腸関節部痛は稀である。IEの危険因子である薬物乱用が増加しており,不明熱,関節痛の原因としてIEに着目する必要がある。