抄録
肺動脈カテーテルにより肺動脈穿孔をきたした症例を経験した。症例は76歳の男性で右冠動脈に対する経皮的冠動脈形成術1ヵ月後に回盲部切除,人工肛門造設術を予定した。周術期モニターとして肺動脈カテーテルを挿入した直後に肺動脈穿孔により大量に喀血した。PEEPを用いた陽圧人工呼吸管理と輸血などの保存的治療で改善し,9日後に人工呼吸器より離脱した。肺動脈カテーテルによる肺動脈損傷は稀な合併症であるが死亡率は高い。本例では全身の動脈硬化が強く,プロトロンビン時間も延長していたため肺動脈損傷の可能性は高く,肺動脈カテーテルの適応を慎重にすべきであった。