抄録
米国において、個々の通信において取得される携帯電話の位置情報については、これを利用者(通信当事者)により通信事業者等に対して任意に提供された「事業記録」と捉えつつ、通信当事者において米国憲法修正4条に基づく保護を主張できないものと解する見解が有力に提示されている。この考え方によれば、この位置情報については、当該事業者等が基本的に自由に取り扱い得ることとなり、これを公権力が捜索等の目的で令状なく通信事業者等から取得することも合理的であると認められるということになる。一方、当該位置情報については、通信の内容に関する情報と同様に、修正4条に基づく保護が(一定の範囲で)及び得ると解する考え方もあり、議論の争点となっている。このような議論については、当該位置情報が日本国憲法上の「通信の秘密」に該当すると解されるということにかんがみると、当該「秘密」の意義・射程やその保護の名宛人の範囲等に関する論点に対して、一定の示唆を与えるものであると考えられる。