情報通信学会誌
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論文
スマートフォンはモバイル・ブロードバンド市場をどう変えたか
OECD 34ヶ国での分析
篠原 聡兵衛森川 博之辻 正次
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2016 年 33 巻 4 号 p. 67-80

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抄録

本稿の目的は、スマートフォンが、モバイル・ブロードバンドの普及や携帯事業者間の競争に与えた影響を、OECD 全 34 ヶ国について、2000 年から 2012 年の期間でパネルデータ分析により検証するものである。データからは、スマートフォンが導入された 2008 年以降、モバイル・ブロードバンドのHHI が低い国ではその普及が進む一方、HHI が高い国では普及が遅れる傾向が見られる。さらに、iPhone を最初に導入した携帯事業者はシェアを増加させるが、その反面当該事業者より大きいシェアを有する事業者がシェアを低下させることが観察される。事実パネルデータ分析により、スマートフォンの導入が、モバイル・ブロードバンド市場の競争を進展させ、これが普及を促進させたとの結果が得られた。新サービスであるスマートフォンが、携帯事業者間の競争やモバイル・ブロードバンドの普及に影響を及ぼすとの結果は、今後各国のブロードバンド政策に示唆を与えるものである。

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