2016 年 34 巻 3 号 p. 41-51
パーソナルデータの利活用の拡大にともないプライバシー保護が重要になっているが、個人情報保護法はプライバシー保護法ではないため、企業のプライバシー保護インセンティブは不当に低くなっている可能性がある。そこで本稿では、プライバシーシールの一種であるプライバシーマークを取得している事業者のWeb サイトを調査し、「プライバシーマークを表示することによって追加的に得られる純利益が大きい取得企業ほど取得を積極的にアピールしている」という仮説を検定することで、企業の想定している「消費者のプライバシー意識」および「委託元企業の個人情報保護意識」を明らかにする。統計的手法を用いた実証分析の結果、上記の仮説は B2C 取引においては支持されなかったが、B2B 取引においては支持された。この結果は、B2C 取引において企業の想定する「消費者のプライバシー意識」は低い水準にあるが、B2B 取引において企業の想定する「委託元企業の個人情報保護意識」は高い水準にあることを示唆している。