本稿では、人工知能に対する法人格の付与について、以下の考察を得た。第一に、すべての人工知能が自然人の模倣を目的とするものではなく、近い将来に現実的なニーズが見込まれるのは、取引関係者の責任を制限するため、法的な権利義務を帰属させる投資媒体としての法人格であるように思われる。第二に、人工知能の自律的な判断に基づいて活動する法人においても、ことさらに構成員や役員を排除する必要はなく、たとえば既存の合同会社を利用する方法でも、その運営に関与する権限と責任を適切に配分することが可能である。第三に、外国法により法人格を付与された人工知能が日本で活動する場合には、抵触法(準拠法の選択)および実質法(外人法の適用)の両面において取引の安全を保護することができる。