情報通信学会誌
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35 巻, 3 号
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論文
  • 海野 敦史
    2017 年 35 巻 3 号 p. 7-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)29条の規定は、公権力に対し、一定の範囲で電子メールの発信者情報の提供を電気通信事業者等に求めることを可能にしている。この規定に基づき公権力が取得し得るのは通信の秘密たる情報に該当しない契約者情報であると解されることが一般的であり、かかる解釈による限り、当該規定と通信の秘密との関係は問題とならないようにみえる。しかし、少なくとも憲法上の通信の秘密に関しては、個々の通信の内容情報や構成要素情報の取扱いのみを保護するものではなく、当該通信を実現する健全な制度的利用環境をも保護しており、その一環として、構成要素情報と密接に関わる契約者情報(例えば電子メールアドレス)等もその保護の射程に含めていると解される。いくら公権力等による個々の内容情報や構成要素情報の取扱い自体に問題がなくとも、制度的利用環境の一環を占めるネットワークの安全性等に問題が生じ、情報が漏えい等することとなれば、通信の秘密が保護されたとは言えないからである。かかる解釈からは、特定電子メール法29条に基づく措置は通信の秘密たる情報の取得ではないから憲法問題が生じないと解するのではなく、同法違反の電子メールの排除のために不可欠となる範囲内で行われる発信者情報の取得については国民全体の通信の秘密を実効的に保護するために必要となる措置として正当化されると解することが合理的である。

  • 斉藤 邦史
    2017 年 35 巻 3 号 p. 19-27
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    本稿では、人工知能に対する法人格の付与について、以下の考察を得た。第一に、すべての人工知能が自然人の模倣を目的とするものではなく、近い将来に現実的なニーズが見込まれるのは、取引関係者の責任を制限するため、法的な権利義務を帰属させる投資媒体としての法人格であるように思われる。第二に、人工知能の自律的な判断に基づいて活動する法人においても、ことさらに構成員や役員を排除する必要はなく、たとえば既存の合同会社を利用する方法でも、その運営に関与する権限と責任を適切に配分することが可能である。第三に、外国法により法人格を付与された人工知能が日本で活動する場合には、抵触法(準拠法の選択)および実質法(外人法の適用)の両面において取引の安全を保護することができる。

  • 音楽産業の実証分析
    山口 真一
    2017 年 35 巻 3 号 p. 29-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    近年におけるIT技術の急速な進歩によって、コンテンツ産業において、コンテンツそのもの(あるいは一部)をフリーで提供し、それに付加価値を加えたコンテンツを有料で販売するフリー型ビジネスモデルが普及してきている。しかしその一方で、フリーで提供された無料財が有料財の代替材となってしまうという、いわゆるカニバリゼーションの問題も指摘されている。そこで本研究では、そのようなフリー型ビジネスモデルの有効性を検証するため、音楽産業における無料ネット配信が、有料財であるCDの販売数にどのような影響を与えているか、内生性に配慮した実証分析によって明らかにする。

    分析の結果、無料ネット配信視聴者数はCD販売数に有意に正の影響を与えており、その弾力性は約0.19であった。また、動画時間によって区別した分析を行った結果、長時間無料ネット配信では有意に正の影響が見られた一方で、短時間無料ネット配信では有意な影響がなかった。さらに、無料ネット配信を行うコンテンツの方が、行わないコンテンツよりも約13%、CD販売数が多いことが分かった。以上のことから、曲の多くの部分を公開する長時間の無料ネット配信はCD販売数を増加させるため、企業はそのような販促型フリー戦略をとるべきといえる。

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