情報通信学会誌
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論文
「プライバシーの合理的な期待」の法理の限界からみた監視型情報収集との関係における憲法上のプライバシー保護のあり方
海野 敦史
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2019 年 36 巻 4 号 p. 63-73

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抄録

公権力による監視型情報収集の普及に伴い、「プライバシーの合理的な期待」の保護に関する修正4条の解釈論(プライバシー合理的期待法理)は揺らいでいる。その主因は、監視型情報収集の対象となる個々の情報に各人が当該期待を有するか否かという問題と、当該収集が対象者のプライバシーを害するか否かという問題との間のずれにある。プライバシーの内実を自己情報コントロール権と捉える通説的な思想は、その保護のあり方を社会的な文脈等に依存し、プライバシー合理的期待法理と通底している。しかし、「合理的な期待」の内実が技術革新の状況等に応じて変容し得る中で、収集・取得される個々の情報に対して当該期待が存するか否かを都度問うことは有意ではない。よって、かかる情報を集合体的に捉えつつ、収集・取得の規模や監視能力に照らして、監視型情報収集が個人の私生活を丸裸にし得るほどの水準に達しているか否かを客観的に問うことが求められる。

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