抄録
間伐遅れの針葉樹人工林の流域における水文流出の特徴を,同時に測定した対照流域の水文流出と比較することによって明確にし,また,調査期間中に行われた間伐が流域の水文流出に与える影響を,日単位の水文データを用いて評価した.その結果,森林で間伐を行うと基底流量のレベルが上昇し,この主要な要因は,樹木の伐採による蒸発散の減少と考えられた.そして,この基底流量の上昇は,間伐遅れの流域では少なくとも3年継続したが,対照流域では,1年程度で元にもどった.また,降雨日における流量は,中小規模の出水では,間伐遅れの流域の方が対照流域よりも多くなる傾向にあったが,大規模な出水では,このような傾向はみられなかった.一方,渇水時の流量については,間伐の影響のない期間では2つの流域の間で明確な差異はみられなかった.