森林火災後,土壌の表層下で撥水性が発現することが知られている.温度上昇に伴って気化した有機物の土中温度勾配に沿った下方への移動が撥水性土壌層発生の原因と言われているが,この時の土中酸素雰囲気に注目した研究は少ない.本研究は,フィールドにおける地表面燃焼実験,土壌カラムを用いた土壌表面加熱実験,酸欠条件・有酸素条件下におけるマッフル炉燃焼実験を行い,撥水性発現機構を検討した.酸欠条件下でマッフル炉加熱した試料は,地表面燃焼実験,カラム土壌表面加熱実験で見られた炭素・窒素含量の変化や撥水性の発現と類似した結果を示した。マッフル炉加熱において酸欠条件の時,土壌温度が300℃を超えると撥水性を示し,また,温度が600℃を超えても炭素分を有し,C/N比は温度上昇に従って増加した.一方,有酸素条件下では,土壌の炭素含有率は400℃以上でほぼゼロになり,C/N比は温度上昇に従って減少し,撥水性は消失した.このことから,地表面燃焼下における土壌の撥水性発現には酸欠条件下で変化する有機物が寄与していると推察される.