抄録
近年,混住化が急速に進行する筑後川流域を対象に,窒素・リンの流れを解明するため,多様な流域情報を考慮した分布型窒素・リン負荷流出モデルを開発した.その結果,各観測地点における河川流量およびTN・TPに関して,概ね良好に再現することができた.つづいて,開発したモデルを用いて,畜舎排水や処理浄化槽を対象とした排出負荷削減対策や,地形連鎖を利用した水田による水質浄化を想定したシナリオ分析を行った.その結果,土地利用形態により水質改善の傾向が異なることから,各地域における負荷排出の傾向の把握,ならびに,それに適した対策の実施が重要であることが確認できた.また,畜舎排水および水田の水質浄化機能に関するシナリオの削減率が非常に大きいことから,農業地域における対策の重要性が示唆された.