抄録
熱収支法に基づいた積雪水当量および融雪量推定モデルを構築するとともに,約1km四方のメッシュの分布型水循環モデルに組み入れ,代表的な暖地積雪流域である関川流域に適用した.構築したモデルは降水量,気温,風速,日照時間データから日単位で積雪・融雪を計算でき,さらに,衛星画像から抽出した冠雪域を用いてモデル中のパラメータを推定することにより山間部等の積雪深の観測値が少ない地域へも適用できる.モデル適用の結果,局所的な降雪の影響を受ける地点を除けば,各メッシュの積雪水当量計算値は観測値との推定誤差約200mm以内に収まることや,積雪・融雪時期の計算流量が,積雪時期の流量低下と,融雪時期の流量の立ち上がりおよびピークと良く一致することが分かり,構築した積雪・融雪モデルが流域全体の積雪・融雪現象を高い精度で再現することが示された.