広域水田灌漑地区における水循環と貯水池管理を組み込んだ用水配分・管理モデルを開発するとともに,それらを実装させた分布型水循環モデルを構築した.その中で,用水配分モデルは河川から灌漑地区への取水,水田への灌漑供給量の推定,河道への還元過程を定式化したアルゴリズムを有し,農業水利施設データベースから抽出した農地の空間分布と施設諸元を用いて作成した灌漑地区ごとに適用できる.他方,貯水池管理モデルは,日本の灌漑用放流の特性を考慮し,頭首工地点の河川流況と灌漑地区の需要量から放流量を決定する.これらのモデルの開発ならびに統合により,河川,貯水池,水田灌漑地区の相互作用や,把握が困難な河川から灌漑地区への実取水量,水田供給水量,河道への還元量等が定量的に評価でき,流域水循環の変化が農地水利用に及ぼす影響評価への展開が可能になった.