平成15年2月施行の土壌汚染対策法は平成22年4月に改正され,自然由来の汚染物質をも対象にすることとなり,自然由来ヒ素汚染土壌の不溶化は緊急な課題になっている.著者らは廃石膏粉の添加によりヒ素の溶出が抑えられることを報告し難溶性ヒ酸カルシウム沈殿の生成によることを示唆しているが,本研究は,ヒ素溶出特性の異なる種々の土壌試料について石膏の効果を調べるとともにヒ酸カルシウムの溶解度を求め数値的に沈殿の可能性を検証することを目的とした.いずれのヒ素汚染土壌についても,石膏粉を0.5~数%添加すると溶出ヒ素濃度は環境基準濃度0.01 mg dm-3以下に低減することが明らかになった.石膏共存下のヒ酸カルシウムの溶解度を計算したところ,検討したpH領域中最も低い値でも0.2 mg dm-3であり,環境基準濃度0.01 mg dm-3より遥かに大きいことがわかった.石膏は土壌のヒ素吸着を促進すること,ならびにその原因はカルシウムイオン吸着によることを見いだした.吸着カルシウムイオンは,土壌の負電荷を中和するとともに正荷電吸着サイトを生成し,ヒ素陰イオンの吸着固定化を促進するものと考えられる.