農業農村工学会論文集
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80 巻 , 2 号
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研究論文
  • 倉島 栄一, 原科 幸爾
    2012 年 80 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    岩手県奥州市胆沢区で展開された国営圃場整備事業の受益地区では,かんがいの用途を終えた16ヶ所のため池が環境保全の目的で保存されている.このような目的で保存されるため池を管理するためには従来のかんがい施設としての水収支や,それと不可分の関係にある熱収支の実態を事前に把握することが重要と考えられる.本研究では保全された,ため池の1つである朴の木ため池を対象として,周辺の圃場整備が実施される前年の2006年の5月から10月にかけて水文気象観測を行った.観測結果に基づいて朴の木ため池の熱収支と水収支の実態を明らかにするとともに,ため池の水温環境の形成は多量の流入水によって特徴づけられることが示唆された.
  • 森 充広, 森 丈久, 渡嘉敷 勝, 中矢 哲郎, 藤原 鉄朗, 齋藤 豊
    2012 年 80 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    上水道,工業用水などと共用されている農業用水路トンネルは,ライフラインとしての社会的重要度も高く,優先的に機能診断を行うべき施設であるにもかかわらず,断水が困難であり,機能診断に苦慮している.そこで,通水状態での農業用水路トンネルの機能診断を簡易的に実施することを目的として,流水中に高感度CCDカメラを搭載した装置を放流し,覆工に発生しているひび割れ等の変状を記録する一次診断が可能な調査システムを開発した.本システムの特徴は,高感度CCDカメラが常にトンネルの壁面に正対しつづける壁面自動追尾機能を導入したことである.実証試験によって本システムの性能を確認した結果,幅1.5mm以上のひび割れ,遊離石灰,漏水状況などを検出することができ,通水状態での一次診断として有効であることを確認した.
  • 中村 公人, 堀野 治彦, 中桐 貴生
    2012 年 80 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    水田地域における魚類生態系を保全するために考案されている「排水路堰上げ型魚道」が整備された水田において,魚類生息状況と水収支を調査し,従来の用排水量諸元に基づいて考察を行った.魚道設置水田においては,魚類の遡上機会の増大を意図して,降雨時に速やかに落水口からの越流が生じるように,また遡上した魚類が田内で生息できるように,湛水深を従来よりも深く,落水口堰板高さに維持しようとする天端管理が行われた.そのために魚道設置水田の取水量と排水量は慣行水田に比べて多くなり,とくに排水量が増加することがわかった.排水量の増加には,無効降雨だけではなく,栽培管理用水が大きく寄与することが明らかになった.魚類生態系保全型の水田水管理のあり方を構築するためには,「魚道管理用水」や「魚類保全有効降雨」といった新たな概念の導入が必要であると考えられる.
  • 福岡 孝紘, 兵頭 正浩, 佐藤 周之, 野中 資博
    2012 年 80 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    富栄養化の内部負荷対策である覆砂工法を実施する上で,覆砂材の確保が現在の課題として存在する.既往の研究では,解体コンクリート微粒分をセメントで造粒した機能性覆砂材は,天然砂以上にリン酸イオンの溶出抑制効果を期待できることが明らかとなった.本報では新たに廃瓦を機能性覆砂材とした際の有用性を検討した.廃瓦単体での諸特性を解体コンクリート微粒分と比較するとともに,廃瓦の造粒利用が覆砂材としての機能に与える影響を評価した.評価項目は,密度,pH,重金属類の溶出・吸着性能に加え,造粒物のリン酸イオンの除去性能と安全性である.各種実験の結果,廃瓦の複合利用により,pHの低下,廃瓦による重金属の吸着が確認できた.造粒物の検討結果からは,廃瓦を複合利用することで,従来のものよりリン酸イオン除去性能の低下が確認されたが,密度の調整が可能となることや重金属類の溶出量を低下させることを確認できた.
  • 吉田 武郎, 増本 隆夫, 堀川 直紀
    2012 年 80 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    中山間水田の耕作放棄が小流域の流出特性に及ぼす影響を検討するため,土地利用・管理状況が異なる3試験流域(耕作水田,放棄水田,森林主体各流域)を設定し,降雨・流出量の観測値から推定した流域保留量,直接流出率,ピーク流出係数を比較した.得られたピーク流出係数の最大値は耕作水田主体流域で0.24,放棄水田主体流域で0.30となった.また,湿潤時の放棄水田主体流域の直接流出率は耕作水田主体流域のそれを最大で31.4%上回った.他方,乾燥状態では耕作放棄の影響は無視しうるか,耕作水田主体流域の流出が放棄水田主体流域より高まる可能性がある.なお,放棄水田主体流域の流域保留量の低下は,同流域の低水流量が低下する可能性があることを示唆している.
  • 阿部 孝行, 北辻 政文
    2012 年 80 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,製紙工場から発生するペーパースラッジ(以下,PSという)の有効利用を目的とし,PSを混和材として用いた気泡モルタルの特性とその利用の可能性について検討した.用途として充填材を設定した上で,室内試験によりPSを用いた充填材の基本物性,耐久性,材料分離抵抗性を確認し,施工現場において実証試験を行った.その結果,PSを用いた充填材は,室内試験において,充填材としての基本性能を充分に満足し,乾湿繰り返し,凍結融解による劣化も認められなかった.さらに既存の気泡モルタルと比較して材料分離抵抗性の向上効果が大きいことが認められた.施工現場においてもその特性が発揮され,施工性の向上が確認された.これらのことから,PSは気泡モルタル用混和材としての利用の可能性が高いと判断された.
  • 志村 友美, 白鳥 克哉, 足立 泰久
    2012 年 80 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    多孔質体中を通過するイモゴライトの移動特性に溶液の化学条件が及ぼす影響を明らかにするため,豊浦標準砂を充填したカラムに,異なるpH・イオン強度条件の下でイモゴライト懸濁液を送液し,破過曲線を得た.その結果,イモゴライトのカラム通過特性は懸濁液中での凝集分散状態に対応して変化し,分散条件では流入したイモゴライト粒子がカラムを通過する割合が高く,凝集条件に移行するにつれ,カラム内に捕捉されやすくなることが確認された.また,臨界凝集条件近傍の分散条件にあたるpH=6.4において,イオン強度の上昇に伴ってイモゴライトの流出開始が遅れることが見出された.この現象は,豊浦砂に沈着したイモゴライト粒子と新たに輸送されるイモゴライト粒子の相互作用が,カラム通過特性に反映されたものと考えられる.
  • 常松 哲, 植松 えり子, 齋藤 謙一, 田村 紘基
    2012 年 80 巻 2 号 p. 141-150
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    平成15年2月施行の土壌汚染対策法は平成22年4月に改正され,自然由来の汚染物質をも対象にすることとなり,自然由来ヒ素汚染土壌の不溶化は緊急な課題になっている.著者らは廃石膏粉の添加によりヒ素の溶出が抑えられることを報告し難溶性ヒ酸カルシウム沈殿の生成によることを示唆しているが,本研究は,ヒ素溶出特性の異なる種々の土壌試料について石膏の効果を調べるとともにヒ酸カルシウムの溶解度を求め数値的に沈殿の可能性を検証することを目的とした.いずれのヒ素汚染土壌についても,石膏粉を0.5~数%添加すると溶出ヒ素濃度は環境基準濃度0.01 mg dm-3以下に低減することが明らかになった.石膏共存下のヒ酸カルシウムの溶解度を計算したところ,検討したpH領域中最も低い値でも0.2 mg dm-3であり,環境基準濃度0.01 mg dm-3より遥かに大きいことがわかった.石膏は土壌のヒ素吸着を促進すること,ならびにその原因はカルシウムイオン吸着によることを見いだした.吸着カルシウムイオンは,土壌の負電荷を中和するとともに正荷電吸着サイトを生成し,ヒ素陰イオンの吸着固定化を促進するものと考えられる.
  • 小谷 廣通, 金木 亮一, 須戸 幹, 岩間 憲治, 皆川 明子
    2012 年 80 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    熱収支フラックス比法を用いて農地からのCO2およびCH4フラックスなどを精確に推定するために,まず,この方法の変数である2高度間の測定温度差と測定混合比差を誤差伝播の法則を使って補正する方法を示した.次に,補正温度差と補正混合比差が比較的大きいデータから得られる乱流拡散係数と渦相関法で測定した摩擦速度との関係を得,これから得られる乱流拡散係数を用いて気体フラックスを推定する方法を示した.この推定法の適用性を検討するために,光量子変換効率(光量子1molあたりの植物体の炭素含量増加量)を用いて算定した純光合成量と,熱収支フラックス比法によるCO2フラックスを基礎にして推定した純光合成量とを比較検討した.両者は,比例係数が0.95,相関係数が0.97と,きわめて良好に一致した.以上ことから,熱収支フラックス比法によって気体フラックスが良好に推定できると考えられる.
  • 兼島 香織, 千家 正照, 伊藤 健吾, 大西 健夫, 平松 研
    2012 年 80 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究の対象種であるケリVanellus cinereusは,水田を重要な生息環境とするチドリ目チドリ科の鳥類である.一方で,近年,我が国では水稲作付面積が減少し休耕田が増加している.そのため,水田を主な繁殖場所とする本種にとって水田地帯は生息しづらい環境になっていると考えられるが,我が国においてはその分布域が拡大している.そこで,本種の採食行動と採食環境を調査することによって,休耕田の拡大が本種の分布域に及ぼす影響について検討した.その結果,本種は視覚に頼った採食方式である「つつき採食」の行動をとり,その行動特性の分析から,視界が開けた環境を必要とすることが明らかとなった.さらに,本種は圃場面の草丈が低く,非湛水か部分湛水の環境を採食環境として選択することから,とくに,稲の草丈が本種の背丈を超え,水田での採食が困難となる中干し期以降に,除草後あるいは耕起後の休耕田にその利用が移動することを明らかにした.
  • 近森 秀高, 永井 明博
    2012 年 80 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    ある閾値を超過するデータを対象とした極値理論であるPOT理論に基づいて,1981年から2010年の30年間に全国21地点において観測された日雨量データから確率日雨量を推定し,年最大値を対象とした従来の年最大値法による推定結果と比較して,POT理論による推定値の特性を調べた.POT理論の適用に必要な閾値を年最大日雨量の統計値を用いて標準化し,全21地点における閾値と確率日雨量の関係を総合的に検討した結果,確率年が短い場合は両手法による推定値に大差はないが,確率年が長い場合,とくに解析対象期間中の最大日雨量が2位以下に比べて著しく大きい地点で,両手法による推定値に大きな差が見られることが分かった.
  • 泉 完, 菊地 真弘, 加藤 幸, 東 信行
    2012 年 80 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    ヤマメ稚魚の尾部の動きと遊泳速度の関係を調べるため,野外の魚道地点で長方形断面のスタミナトンネルを設置し,断面平均流速48~137cm·s-1で河川水を流して全長4.4~8.8cm(体長3.7~7.5cm)の稚魚を遊泳させた.解析には高速度カメラを用い,尾ひれの動きと振幅,尾ひれの振動数と遊泳速度の関係について検討した.その結果,ヤマメ稚魚の振幅と全長との比は,尾ひれの振動数や遊泳速度が増加してもほぼ一定でその値は0.12であった.ヤマメ稚魚は尾ひれを1秒間に20.8~39.1回振って泳ぎ,高振動数域でも遊泳速度との間に比例関係が認められ,遊泳速度と尾ひれの振動数に関する実験式を得た.
  • 有田 博之, 橋本 禅
    2012 年 80 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    近年相次いで発生した大規模地震の被害は,様相・発生形態等の多くの面で従来とは異なる.このため災害復旧の現場では既存制度の不適合が指摘され,改善が求められている事項は少なくない.農地・農業施設の災害復旧においては原形復旧が原則とされているが,再度被害防止や整備水準向上などを目的とする改良復旧が求められている.また,個別被害の復旧においても計画に沿った事業推進の必要性が指摘されている.とりわけ,災害復旧を地域形成的な視点から見直すことの必要性は高まっている.本論では,現況制度の不適合の内容を検討するとともに,復旧手法の改善方策を提案した.また,地域形成の視点から,被害レベルに対応した計画的取り組みのあり方について提案した.
研究報文
  • Wataru KAKINO, Toshishige ITOH, Atsushi KOBAYASHI, Yutaka YOSHIDA
    2012 年 80 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    The abundance of the freshwater mussel Inversiunio jokohamensis was investigated in a reservoir where management has been abandoned. The investigation was carried out on September 12, 2009, and composition of microalgae investigated on November 8, 2009. The results obtained were summarized as follows: 1) individuals in shore side habitat were more abundant than in offshore side; 2) there was a noticeable absence of individuals with < 50 mm body length; 3) the ratio of old individuals was high while diversity of generation was minimal; 4) no fish were caught using a trap method in the reservoir. This research indicated that recruitment had not occurred for several years.
  • 坂本 康文, 篠塚 政則, 鎌田 修, 緒方 英彦
    2012 年 80 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    ほ場内農道における土砂系舗装の供用性は明らかにされておらず,そのために土砂系舗装の性能規定化が進展していない.そこで,鳥取大学付属農場内のほ場内道路にて試験舗装を構築し,土砂系舗装の供用性を評価することとした.試験舗装には,土圧計や水分計を埋設して,舗装内部の応力状態や水分の状態を把握するとともに,定期的に追跡調査を実施して縦断の路面形状および振動加速度などを測定した.本文では,土砂系舗装の路面高さおよび振動加速度は正規分布することなどを明らかにした上で,土砂系舗装の平たん性に関して考察を加えた.
  • 渡部 恵司, 千賀 裕太郎, 森 淳, 小出水 規行, 竹村 武士
    2012 年 80 巻 2 号 p. 207-213
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,コンクリート製の農業水路にカエル類の移動経路確保工を導入した後の,個体群存続性の評価手法の開発を目的とした.ニホンアカガエルを対象に,齢構造モデルに基づく個体群動態の基本モデルおよび水路の横断を考慮した横断モデルを開発した.パラメータの値は既往の個体群動態のデータから推定し,基本モデルによるシミュレーション結果と前述の個体群動態のデータを比較してモデルの妥当性を確認した.横断モデルによるシミュレーションから,初期個体数1,000の時,40年経過後の個体群存続率95%を達成するための条件は,水路横断率100%であった.したがって,この場合には水路の横断を確実なものとする必要がある.
  • 岡島 賢治, 鏑木 諒, 飯田 俊彰, 安瀬地 一作
    2012 年 80 巻 2 号 p. 215-221
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    農地石垣の実態と特徴を把握するため,まず,これまで曖昧なまま用いられていた農地石垣に関する用語を整理して明確化し,次に,西日本を中心に農地石垣地域を12地域選定して,現地調査とヒアリング調査を行った.調査対象地域では,農地石垣は急傾斜地の農地の開墾の際により広い農地を確保するために,地山から産出する石材を用いて築造されていた.農地石垣の構造に関しては,野石,雑割石を用いた野面積みによる空石積み工が主体であった.また,石組には対象地域間の傾向の違いは認められるものの,ひとつの対象地域内で築造時期や修復時期などによる多様性が顕著であった.さらに,断面構造を道路石積み擁壁のものと比較した場合,勾配,裏込材の質,量や基礎部に大きな違いがあることが把握された.
  • Noriyuki KOBAYASHI, Junya MOCHIDA, Yutaro SUMIDA, Yoshitaka YOSHITAKE
    2012 年 80 巻 2 号 p. 223-230
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    When improvement works for overage irrigation tanks are performed, existing embankment is first excavated, then a new outlet conduit is established and is buried with backfill material. In this case, the stress generated in the backfill between outlet conduit covered with reinforced concrete and the existing embankment may decrease. This phenomenon is called arching action and causes a large reduction of stress. Consequently, the backfill under the arch becomes a weak point in the structure and poses a risk of hydraulic fracturing. In this study, the arching action is evaluated quantitatively. Parametric studies on inclination angle of excavation, excavation width, stiffness of foundation and existing embankment and compaction stress are performed to reveal the influences on the stress condition. Moreover, the effect on the arching action of the stiffness of flexible conduit, which has recently become popularly used in the improvement of irrigation tank, are discussed.
研究ノート
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