熱収支フラックス比法を用いて農地からのCO2およびCH4フラックスなどを精確に推定するために,まず,この方法の変数である2高度間の測定温度差と測定混合比差を誤差伝播の法則を使って補正する方法を示した.次に,補正温度差と補正混合比差が比較的大きいデータから得られる乱流拡散係数と渦相関法で測定した摩擦速度との関係を得,これから得られる乱流拡散係数を用いて気体フラックスを推定する方法を示した.この推定法の適用性を検討するために,光量子変換効率(光量子1molあたりの植物体の炭素含量増加量)を用いて算定した純光合成量と,熱収支フラックス比法によるCO2フラックスを基礎にして推定した純光合成量とを比較検討した.両者は,比例係数が0.95,相関係数が0.97と,きわめて良好に一致した.以上ことから,熱収支フラックス比法によって気体フラックスが良好に推定できると考えられる.