モンゴル国では,ゾドと呼ばれる家畜の大量死につながる寒候季の寒雪害が頻繁に発生し,遊牧に甚大な影響を与えている.ゾド発生の有無は,気象要因と人的要因とが複合して決まるため,両要因を峻別することはゾド被害軽減策のために極めて重要である.本研究では,モンゴル国東部のドルノド県を対象にして気象条件とゾド被害発生との関係を分析した.その結果,冬季多雪条件下で降雪量と斃死率との相関が明瞭になり,夏季少雨および冬季低温の条件が重なると,さらに傾向が顕著となることが明らかになった.他方,夏季少雨,冬季低温,冬季少雪の単独条件下では,気象条件と斃死率との間には明瞭な相関関係が見られなかった.以上より,冬季多雪が要因と言われるツァガン・ゾド(寒雪被害)は気象条件を規定要因とみなすことができ,その他のガン・ゾド(干ばつ被害),ハラ・ゾド(無降雪被害),フィテン・ゾド(寒冷被害)は気象要因のみが決定要因ではないことが示唆された.