イリ川下流域の灌漑地区では,水稲作と畑作の輪作が行われ,畑作物は生育初期を除き畑作圃場周囲の水路・水稲作圃場からの浸透により上昇した地下水を利用し生育する.一方で,過剰な地下水位の上昇は塩類集積の原因となるため,適切な地下水位管理が求められ,適切な管理に向けて地下水位変動の時間・空間的な特性を把握することが重要である.
そこで本稿では地下水位変動特性の時空間分析を行い以下の知見を得た.1)水稲作が本格的に導入された70年代より地下水位は急激に上昇し,取水量が最大であった80年代にピークを迎え,取水量の減少とともに現在低下傾向を示している,2)非灌漑期では地下水位の空間分布は地表面にほぼ平行であるが,灌漑期での地下水位上昇の空間分布は一様ではない,3)ある地点の地下水位変動は,周辺の農地利用や排水路の整備状況により影響を受けることが示唆された.