抄録
茨城県南部土壌と代表的な粘土鉱物へのセシウム(Cs)の吸着と脱着の特徴を,安定同位体133Csを用いて調べた.Cs濃度1 mg L-1のCsCl溶液約27 mLを1.0 gの土に添加すると,霞ヶ浦ヘドロは添加したCsの97%,黒ボク土表土は88%を吸着した.その後水で3回洗浄すると,黒ボク土表土の場合Cs吸着量は82%に,さらに1M KClで3回洗浄すると75%に低下した.用いたKの濃度が農地のそれより3桁高いことを考慮すると,施肥等による土壌からのCs溶出は少ないと考えられた.Cs初期濃度0.01~10 mg L-1の範囲で分配係数(Kd)を比較した結果,黒ボク土,霞ヶ浦ヘドロのKdは,初期濃度が低くなるほど上昇した.実際の汚染土壌中の137Csの濃度はこれより数桁低いことから,放射性Csは今回の実験結果よりも強く土壌に吸着されていると考えられた.