2015 年 83 巻 1 号 p. 11-19
本研究では,降水量に関する気候モデル予測値を,気候変動下の農地土壌水分移動予測計算に適する,日単位よりも細かい時間分解能に合理的にダウンスケールする手法を検討した.一般に気候モデル予測値は月単位として出力され,時間分解能の細密化はデータの変動性の増大を伴う.これに対し本研究では,weather generatorを用いることによって統計的に生じ得る複数の時系列データを生成し,増大する時間変動性を再現した.月単位の降水量予測値に対して単純に(30×24)時間で割って算出した1時間降水量予測値を土壌水分移動予測計算に用いた場合は,土壌水分予測結果は計算対象期間を通してほぼ一定であったのに対し,weather generatorを用いて時間ダウンスケーリングを施した降水量予測値を用いた場合は,将来の降水パターンの変化に伴う過湿あるいは過乾燥となる期間や頻度の変化を予測できた.