抄録
水田が大部分を占める石川県手取川扇状地を対象とし,都市化に伴う洪水量の変化を解明する前提で,単位区画における大雨時の流出量を単位流出量と定義し,その流出モデルを作成するとともに,併せて流出解析を行った.すなわち,水田については,落水口の形状,高さ,中干し前後の湛水状況および浸透量等を,畑地および宅地においては浸入能を測定して,土地利用ごとに洪水流出モデルを作成し,計画基準雨量規模の降雨54例から単位流出量の特性について検討した.総流出率の最大は宅地で,最小は灌漑期水田で発生し,灌漑期水田では総降雨量の増大とともに顕著に増加するのに対し,宅地ではほぼ一定となることを明らかにした.また,ピーク流出量の算出に使用する降雨強度について,60分間隔と10分間隔の資料について検討し,宅地を除いて,前者で十分な精度が得られることを明らかにした.