近年, 水文・気象分野における新たな水のトレーサーとして, 温度にほぼ依存しない指標である
17O-excessの研究が海外で進められている.しかし, わが国の水田農業地域での観測例はまだない.本研究では, 茨城県において降水, 河川水, 地下水および灌漑用水, 田面水を対象に,
17O-excessの観測値, 時期による値の違いとその要因, 他の同位体との関係を明らかにした.降水の
17O-excessは夏季に低く, 冬季に相対的に高い傾向を示した.これは海洋で降水が生成される環境の違い, 降水過程での雨滴の再蒸発が影響した結果であると考えられた.また, 降水が陸面に到達した後に蒸発の影響による
17O-excessの減少が見出され, その傾向は田面水で顕著であった.今後のさらなる観測データの蓄積が,
17O-excessの水循環指標としての有効性の確立に必要である.
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