抄録
東京電力福島第一原子力発電所事故によって広域に拡散した放射性物質は,降雨時に浮遊物質とともに流下するため,浮遊物質および放射性物質の移動を明らかにすることが重要となっている.放射性物質が粗粒より細粒の土粒子により多く吸着することから,粒径ごとに浮遊物質の生産および移動を推定するモデルを開発した.このモデルを,流域を対象とした分布型水文モデルに組み込み,河川中の浮遊物質とともに移動する放射性物質の時空間的変化を評価する.本モデルにより,福島県内のダム流域を対象に放射性物質の移動を連続的に推定した.結果は大小の出水時における放射性物質の流下を再現しており,このモデルは降雨時の予測だけでなく,水資源への放射性物質の長期的な影響評価に活用することができる.