2017 年 85 巻 1 号 p. I_129-I_135
地下水位制御システムは政策目標として水田への導入が推進されFOEASはその一手法である.FOEASによる栽培上の効果や土壌水分変化に関する研究が転作作物を対象にみられるが, 直播栽培などの稲作を対象とした研究は少ない.本研究では現場透水試験により地下灌漑が可能であることと, 積雪前の均平作業で十分な均平精度が得られたFOEAS圃場において, 不耕起V溝直播栽培の生育初期に地下灌漑を実施し, 視覚的に灌漑の広がりを捉えるとともに, 地下水位変化および水収支を測定した.その結果, 地下灌漑では圃場全体を均一に灌漑できる一方で, 水位制御器内の水位設定や暗渠からの距離により, 灌漑開始直後は地下水位の上昇傾向が異なることが示された.また, 水位制御器の水位設定を田面下に設定すると, 水位管理器がない圃場では直接圃場外に流出する用水が増えることを留意点として示した.