石川県手取川上流において発生した大規模な土砂崩壊により,手取川では2015年から高濃度濁水が長期間にわたって発生し,下流扇状地の地下水水循環に影響が及ぶことが懸念されている.本研究では,濁水発生前後で水田減水深調査および河川流量観測を実施し,高濃度濁水が地下水涵養機能に及ぼす影響を調べた.その結果,濁水発生前後で水田からの浸透量は有意に減少し,河川からの伏流量は減少して伏流区間が狭まっており,水田土壌と河床に土砂が堆積して目詰まりを起こしていると考えられた.観測結果に基づいて地下水涵養量を概算すると,濁水発生前より水田からの涵養量は270 mm/year(36%)減少し,河川からの涵養量は591 mm/year(61%)減少した.さらに,扇状地全体の地下水涵養量は濁水発生前より861 mm/year(36%)減少し,この減少量は実際の地下水位低下量とおおよそ整合していた.