カオリナイトのリン酸吸着量はなぜpHや支持電解質濃度により変化するのか,特になぜある特定のpHで吸着量が極大となるのか,その機構は十分明らかにはなっていない.本研究では,入来カオリナイトを試料とし,バッチ法により種々のpHと支持電解質(NaCl)濃度におけるリン酸イオン吸着量を測定した.リン酸吸着量は平衡リン酸濃度1mM以下の場合pH6で最大となり,pH4-6では支持電解質濃度が高い場合にリン酸吸着量が増加することを示した.競合ラングミュア吸着式によって表される簡略化した表面錯体モデルと測定ゼータ電位を用いた考察から,特徴的なカオリナイトのリン酸吸着反応には,吸着部位であるアルミノール基や溶液中のリン酸イオンに生じるプロトン化・脱プロトン化反応のほかに,pH変化やリン酸の吸着それ自体による吸着面の電位の変化が強く影響していることが明らかにされた.