利水の便から河川中上流域に多い農業取水堰では,経年的な下流河床低下により堰直下に落差を生じやすい.このため堰直下が洗掘されやすく,護床工の傾斜化,流失,機能不全を来しやすく,洗掘域の拡大によりエプロン陥没など堰本体被災を起こすこともある.堰本体被災に至るような大規模洗掘は低頻度の大洪水時に生じるが,その対策に資するべく,本研究では下流河床低下が問題となる農業取水堰の現地諸元を想定して,大洪水時の堰直下洗掘メカニズム,洗掘規模をフルード相似に基づく水理実験により検討した.その結果,洗掘は,堰落下流が波状流,潜り噴流の流況を交互に繰り返し,互いの流況での洗掘域を埋め戻し合いつつ,最大洗掘深を上下動させながら漸次進行していくことが明らかとなった.この経時最大洗掘深は実験式により±10%以内の精度で推定出来た.