2020 年 88 巻 1 号 p. II_11-II_20
本研究は東南アジア流域を対象に, 計算時間やデータ寡少性の問題を同時に克服可能な降雨流出モデルの開発, および地域開発や気候変動に伴った降雨流出過程の将来変化を定量的に評価することを目的とした.流域を矩形メッシュの集合体で表現する分布型降雨流出モデルを構築し, メッシュ分解能をkm単位とすることで計算時間を短縮した.一方で, 流域内の土地利用状況を的確に表現するため, 各メッシュに森林, 水田, 畑地, 市街地における流出特性を表現可能なタンクモデルを配置し, 時間的に安定した基底流成分を表現する流域地下水タンクモデルを設定した.シナリオ分析により, 土地利用状況や降雨量の変化に伴う降雨流出過程の将来変化を, 流域全体の年間流出量やピーク流量のみならず, 各土地利用における流出量や流出パターンの変化という観点も含めて定量的に評価できた.