これまで流域面積雨量は, 地点雨量の観測と情報処理によって推定されてきたが, 山地流域においては観測地点が少なく推定精度に問題があった.現在, 公表されているレーダーアメダス解析雨量(正式名称「解析雨量」)は降水量を面的に把握するため, 流域面積雨量の推定に適していると思われる.本論文は, 手取川山地流域を対象に, 水収支法によって解析雨量の推定精度を検討した.すなわち, 流域蒸発散量と流域流出高が正しいとすれば, 水収支差は通年において約607mm(流域面積雨量に対する水収支差の割合-17.2%)と解析雨量による流域面積雨量は過小な値となったが, 降雪・積雪・融雪の影響がほとんどない夏期(6月下旬~10月中旬)では, 約49mm(4.7%)の収支差で, 推定精度が高いことが示された.以上のことから, 冬期を除いて, 解析雨量は流域面積雨量を正確に推定できることが示された.