気候変動が畑地の灌漑必要水量に及ぼしてきた影響を評価するため, 芝畑を事例として, タンクモデルを用いて1979~2019年の過去41年間における毎年の灌漑必要水量を推定した.灌漑必要水量は有意な増加傾向であり, 41年間で15%増加していた.灌漑必要水量を目的変数とし, 日照時間, 平均気温, 降水量, 最大連続干天日数を説明変数とする重回帰式を用いて, 各説明変数が灌漑必要水量の増加に与えた影響を評価した.灌漑必要水量の増加要因としての割合は, 平均気温の上昇と最大連続干天日数の増加で81.1%と要因のほとんどを占めていた.また過去41年間の確率計算で, 再現期間10年の計画灌漑水量を決定しても, 灌漑必要水量が増加していくため, 計画決定時よりも早い年から既に10年より短い再現期間で灌漑必要水量が計画灌漑水量を超えてしまい, 利水安全度は年々低下していく可能性が示された.