洪水対策として,流域全体での総合的な治水が検討されている.降雨時の直接流出の削減においては水田が持つ洪水緩和機能の発揮が期待されており,これを強化するために水田排水桝に落水量調整板を設置することが注目されている.本研究では奈良県大和平野に位置する圃場において,落水量調整板を設置した場合のピーク流出量緩和効果を定量化した.その結果,流出モデルに10年確率降雨を入力した場合,非灌漑期,灌漑期にそれぞれ30%,21%のピーク流出量緩和効果が見られた.また,圃場特性に関するパラメータの感度解析の結果,落水量調整時のピーク流出量緩和効果は,降雨開始時の圃場湛水深,排水桝堰板からの流出を規定する要因,圃場の浸透性,堰板天端高さといった圃場特性の違いによって変化するが,ピーク流出量は安定して低下し,落水量調整板のピーク流出量緩和への有効性が示された.