2021 年 89 巻 2 号 p. I_363-I_369
近年,コア用土の不足により,ジオシンセティッククレイライナー(GCL)を用いて,ため池を改修する事例が増えているが,その設計方法は確立されていない.課題の一つとしてGCL下流側の浸潤線を設定する方法が確立されておらず,下流側堤体の安定計算を適切に実施できないことが挙げられる.本研究では,実績のある従来の傾斜コアで用いられる浸潤線設定方法をGCLに対しても適用するため,GCLに外接する平行四辺形を仮想傾斜コアとした.さらに堤体土とGCLという複数の土質材料が含まれる仮想傾斜コアの透水係数を求める方法を提案し,FEM浸透流解析からGCLと仮想傾斜コアの浸潤線を比較した.堤体の透水係数,GCLの敷設条件,堤体の規模などの条件を変えたFEM解析を実施したところ,仮想傾斜コアの浸潤線はGCLの浸潤線と概ね一致し,本研究で提案した仮想傾斜コアおよびその透水係数の設定方法の妥当性が確認された.