水田灌漑のための用水路系において,上流側の開水路と下流側のパイプラインを調整池が接続している地域を対象に,調整池が上流側の水利用に及ぼす影響を評価した.対象地域では,用水スケジュール策定において調整池への流入量を削減し,その削減量を開水路受益地に再分配している.これにより開水路受益地の用水量を平均から最大約20%増加させ,水利用の弾力性を向上させている.また日々の運用上では,あらかじめ上流側で多く取水することで調整池の流入量を可能な限り減少させておき,調整池の急激な水深低下等の場合のみ流入量を臨機応変に増加させている.この運用手法により地区全体で水利用の弾力性を更に向上させることができる.本運用手法を用いることで,水需要が逼迫する時期には,調整池により24時間を超えた需給調整が行われていた.