近年,農業用ため池の老朽化にともなう堤体改修工事が増加している.検討項目のひとつである堤体内浸潤線の予測に関して,一般的な改修工法である前刃金工法(傾斜コアを用いた改修)の設計では,傾斜コアの形状と上流側水位および堤体材の透水係数をもとに計算される.しかし,この方法では基礎地盤への浸透が発生しないという条件のもとで計算が行われ,実際の浸潤線と異なることが指摘されている.本研究ではFEM浸透流解析をもとに,現行の浸潤線計算式の問題点について整理した.その結果,傾斜コアの透水性が低い場合,現行設計法による浸潤線は安定計算上危険側に計算されること,および,基礎地盤内の浸透が堤体内浸潤線の上昇に影響することがわかった.また,この2つの問題に対して,各堤体材の透水係数を変数とする関数を用いることで,現行設計法の計算上の誤差を小さくし,より実際の浸潤線に近い結果を得る方法を提案した.