2023 年 91 巻 2 号 p. I_203-I_209
鋼矢板式護岸は,農業水利施設の中でも低平地の排水路に広く採用されている.40年以上使用された施設では,腐食が進行しているため,部分的な補修は不可能である.そのため長寿命でかつライフサイクルコストを低減できる新たな更新工法が求められている.筆者らは,耐食性と経済性に優れたステンレス鋼矢板を提案している.本研究では,農業用排水路におけるステンレス鋼製矢板の腐食特性を暴露試験により把握した.実環境におけるステンレス鋼の特性を調べた結果,開発材は従来の鋼矢板材に比べて腐食特性が改善されていることが明らかになった.鋼矢板の設計に用いられる腐食代をコストに換算することにより,耐用年数に応じたステンレス鋼材の選択が可能となることが明らかになった.