2023 年 91 巻 2 号 p. I_211-I_219
農業水利施設の大半を占めるコンクリート構造物の主要な劣化はひび割れである.コンクリートのひび割れ抑制のために使用される混和材料には,膨張材や収縮低減剤などがあり,各種混和材料のひび割れ抑制効果は明らかになっているものの,混和材料を組合わせた際のひび割れ抑制効果を明らかにした研究は稀有である.そこで本研究では,ポリプロピレン短繊維,膨張材,収縮低減剤を配合したコンクリートを作製し,ひび割れ抑制効果を定量的に評価した.さらに,ポリプロピレン短繊維を配合することで施工性への影響が懸念されるため,中流動コンクリートへの適用性を室内試験,現場試験より検証した.その結果,本研究で提案する混和材料を組合わせた中流動コンクリートは,ひび割れ抑制効果が高く,農業水利施設への適用が可能であると結論付けた.