わが国の河川を水源とする大規模水田稲作地域では,これまで水利用者間の配水調整は,集落を基礎単位とした重層的な水利組織が担う体制となっていた.ところが,近年,水利用者の多数を占めていた小規模農家に替わり大規模経営体が増え,水利用者が少数化・多様化してきたことから,配水調整体制の再構築が課題となっている.そこで,本報では,先行研究で示されてきた,配水調整体制が備えるべき基本的要件を整理した上で,水利施設の概念モデルを用いて,大規模経営体の増加に対応するための配水調整体制を分析した.その結果,①交渉の場を設けるといった基本的要件を備えた配水調整体制は,小用水路の水利用者グループを基礎単位とした重層的な水利組織であること,②配水調整による合意の遵守を促す仕組みとして,土地改良区にもICT水管理の監視・操作の権限を持たせることを示した.