2024 年 92 巻 1 号 p. I_163-I_176
気候変動の影響により, 豪雨災害の激甚化や頻発化が予想されている.農業水利施設の一つであるため池においても, 気候変動の影響を考慮する必要があると考えられる.そこで, 本研究ではため池の設計洪水流量に対する気候変動の影響評価手法を示すとともに14地点のアメダス観測所を対象に5km空間解像度の将来予測データを用いて影響評価を行った.また, その評価結果に基づいて気候変動に対する適応策の効果について検討を行った.その結果, 気候変動の影響によるため池設計洪水流量の将来変化倍率は2℃上昇シナリオでは1.06∼1.30倍, 4℃上昇シナリオでは1.10∼1.85倍となった.また, 気候変動に対する適応策として降雨前に空き容量を設けた場合, 2℃上昇シナリオに対しては対応可能であるが, 4℃上昇シナリオに対しては洪水吐の拡幅と組み合わせて対策を講じる必要があることが明らかとなった.