野生のカジカ小卵型当歳魚(平均標準体長2.5cm)を対象に,遊泳実験を行った.本実験から得られた知見を以下に示す.1)カジカ小卵型は,流水中において着底と前進行動を繰り返し,前進する際には,体を左右に振動させて尾鰭を振ることで推進力を得て遊泳した.着底時には,胸鰭を底面に押し付けるようにして体を保持した.2)流速20~60cm/sの条件において,着底から着底までの1回の遊泳継続時間の95%が1秒未満であった.この間の遊泳速度の計測値は,最大100cm/sであった.3)カジカ小卵型が前進可能な頭部近傍の流速は,70cm/s未満であると考えられた.4)流水中を30cm以上前進できた個体の割合は,流速50cm/sの条件では55%であった一方で,流速60cm/sの条件では17%となった.