抄録
港湾など海岸構造物によるホッキ貝の漁場形成の解明を水理学的観点から行うこととし, 北海道の石狩湾新港の東防波堤東側海域を対象に, 貝の浮遊幼生期である夏期の流況観測および水理模型実験などから, 構造物周辺の流れ機構について考察した。その結果, 石狩川と防波堤を南北の流れ境界として, 右回りの大きな循環流が形成され, 東防波堤付近には渦流域がある。防波堤の影響範囲は, 北防波堤までの距離を半径とする円の北東側である。また, しけ時には, 海浜流セルの循環流が形成される。貝の浮遊幼生の多くは, これらの流れに乗って他の海域に流出することなく成長し, 海底に沈着していくものと考えられる。