抄録
締固め最適含水比の認められない火山灰土壌を用い,締固め土の構造を収縮挙動から評価することを試み,構造と物理性に対する締固め含水比の意味を考察した。
その結果,締固めた火山灰土壌の飽和透水係数とpF3以下水分量は,締固め含水比がある値より低くなると急に増大する傾向を示し,締固め最適含水比の存在する非火山性土壌と同様の関係を示した。締固め土の構造指標として構造性間隙量を用いると,構造性間隙量と締固め含水比の関係から,透水性・保水性の変化をうまく説明することができた。締固め土の構造や物理性が急に変化する締固め含水比は,乾燥により土塊が実際に収縮し始める含水比と一致する傾向が認められた。
(1)供試した火山灰土(火山灰質粘性土と有機質火山灰土)の非乾燥・非繰返し法による締固め曲線では,いずれも明瞭な締固め最適含水比は認められなかった。
(2)締固め土の飽和透水係数およびpF3以下水分量は,締固め含水比がある値より低含水比になると急に増大し始め,締固め最適含水比の存在する沖積粘土と同様の形態を示した。
(3)締固め土の収縮挙動から,締固め土の間隙を収縮性間隙,構造性間隙,死間隙の三つの間隙成分に分類した。
(4)締固め土の構造性間隙量は,締固め含水比がある値より低含水比側になると急に増大し始め,(2)と同様の関係を示した。
(5)構造性間隙量と飽和透水係数およびpF3以下水分量との間には,異種土壌間にわたって正の比例的関係が認められ,構造性間隙量が締固め土の構造指標と見なせることを明らかにした。
(6)火山灰土で締固め土の物理性や構造が急に変化し始める締固め含水比は,土塊が構造収縮から正規収縮的過程に移行する含水比に相当しており,収縮が始まることによって土塊の強度が増大し始め,このため締固め土に大間隙(土塊間間隙)が形成されやすくなると考えられた。
本研究は,文部省科学研究費一般B(No.59460188:代表者,前田隆),一般C(No.62560224:代表者,矢沢正士)によって行ったことを付記し,関係各位に謝意を表します。