抄録
全国に約25万箇所点在するため池は地域の貴重な水資源となっている. しかし豪雨災害はほぼ毎年発生しており, 農村の混住化が進む中, 地域の安全性にとって重要な問題となっている. 本研究では複数の災害事例をもとに降雨量と災害の分布, 個々の被災形態からの被害の特徴・要因を明らかにし, 破壊形態の類型化を行った. 降雨量とため池の被害分布の関係を分析した結果, 時間最大雨量20mm, 積算雨量200mmを下限値として被災が発生しており, 特に時間雨量40mm以上の強い降雨強度を引き金として被災が発生する傾向が見られた. 被災形態の調査から, 被災の原因は越流, 堤体のすべり, 浸透破壊に分類され, 浸透破壊の事例が最も多く見られることが分かった. さらに浸透破壊は常時満水位付近の上流斜面を浸入点とする形態が多いことが分かった. すべり破壊においては, 下流斜面の法尻から破壊が発生する事例が多いことが分かった. また, 越流破壊では盛土高の高いみお筋部が沈下し, 越流水が集中して決壊に至るケースが見られた.