抄録
本研究では地盤内における硝酸態窒素, 亜硝酸態窒素, アンモニア態窒素の形態変化を表す1次元有限要素モデルを構築した. 本モデルは工学的なモデルの適用を考慮して, 硝化作用と脱窒作用, 植物吸収を0次あるいは1次反応で簡潔に表現したモデルである. 原位置での物質移動実験では体積含水率と硝酸態窒素の時系列変化や形態変化に関与するpHの分布, 硝化菌と脱窒菌の生息数について計測した. そして, 実験28日目の体積含水率と硝酸イオン濃度分布を再現できるように地下涵養率と反応定数をキャリブレーションにより決定した. さらに本モデルの妥当性の検証として, 実験42日目の測定値と解析結果を比較し, 両者の良好な一致を見た. 反応定数は微生物の生息数と関係していると推察され, パラメータを簡略化した本モデルは短期的な解析に向いており, 試験地における硝酸態窒素の移動を予測することが可能であることがわかった.