抄録
圃場整備事業に伴い水田, 小水路, 河川との間に大きな落差が構築され, 水域ネットワークが分断されたことが原因となり水田水域の魚類の生息数が減少している.水域ネットワークの再構築のための工学的な手法の一つとして, 水田の水尻や水路の落差工に設置する小規模魚道の開発が進められている.小規模魚道の設置諸元の検討には, 対象となる小型魚類の遊泳能力を考慮する必要がある.そこで, 本研究では管水路を用いた装置に供試魚を遊泳させドジョウとフナ類の遊泳能力を評価した.結果を以下に記す.1) 従来いわれてきた, 魚類の定位を前提とした突進速度, 巡航速度を測定することはかなり困難であることがわかった.したがって, 本研究では, 魚類の遊泳形態に着目し遊泳能力を検討した.2) 体長5cm台, 7cm台のドジョウ, 4-6cm台のフナ類は, 流速50, 70cm・s-1で盛んに突進遡上行動を行った.3) 5cm台のドジョウは体長の15.5倍程度の流速 (82.6cm・s-1), 7cm台のドジョウは体長の12.3倍程度の流速 (89.0cm・s-1), また, フナ類は体長の13.7倍程度の流速 (69.6cm・s-1) に対して, 4割の確率で100cm遡上可能であることがわかった.