抄録
一般に, 魚類の生息環境としては, 流水要素の多様性, 水質要素の多様性および空間要素の多様性が重要な形成要因となり, これらに対する魚類の応答行動として良好な棲み場所環境が決定される.本研究では, これらの環境因子の中から水深因子, 流速因子および遮蔽因子を取り上げ, メダカ (Oryzias latipes) の生息場選好性を農業用水路において実施したフィールド調査の結果を基に検討した.魚類が本質的に有する応答行動のあいまいさを積極的に捉えファジィ推論を導入し, 遺伝的アルゴリズムを用いた最適値探索により選好強度を定式化した.その際, フィールド調査における環境因子の測定値に含まれる不正確さをファジィ数で表現し, 明示的にモデルに組み込んだ.フィールド調査の結果を用いて構築したファジィ選好強度モデルによりメダカの空間分布を良好に再現することができた.