農業土木学会論文集
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2005 巻, 239 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 京都府下2地区を対象地域として
    武山 絵美, 高橋 強
    2005 年2005 巻239 号 p. 463-470
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 集落レベルを対象に, 生産調整下における小規模稲作地域の水田利用・管理特性とこれに係わる基盤条件を解明することにある.営農体制の異なる京都府日吉町と同舞鶴市の2地区を調査対象とし, GIS (地理情報システム) を用いて水田1区画ごとのデータベースを作成・分析した.その結果, 第一に, 集落からの相対的通作距離が転作水田の利用・不利用の選択を規定する基盤条件であり, 集落付近の水田団地では作物転作が, 集落から遠い水田では休耕による生産調整対応が多いことがわかった.第二に, 圃場整備の有無は, 利用・不利用地管理の方法を規定する基盤条件であり, 整備済み水田は利用・不利用に係わらず適切な水田管理が実施されることがわかった.しかし, 集団営農が実施されない場合は圃場整備のメリットが活かされず, 区画の分割・固定利用が行われる傾向も明らかとなった.
  • 中曽根 英雄, 蕪木 元成, 黒田 久雄, 加藤 亮
    2005 年2005 巻239 号 p. 471-479
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦では貧酸素塊の発生がしばしば観測されている。そして, 霞ヶ浦・北浦で観測された貧酸素塊の分布は, 北東風によって底層の貧酸素塊が風上で湧き上がり, 風下で高酸素水塊が下に沈み込むというものであった.その後, 霞ヶ浦・西浦で観測された貧酸素塊の分布はそれとは別の分布を示していた.この両者の相違がどのような理由で生じるかを確かめる目的で, 本研究を行った.これまで, 霞ヶ浦のシミュレーションは, 湖流について3次元で行なった事例や水理模型実験によるものはあるが, 水質については行なわれていない.そこで, 3次元水質シミュレーションモデルを作成し, シミュレーションを行なった、その結果, 湖流については, 従来のシミュレーションとは異なったが, 水理模型実験結果と同じようなものとなった.また, 貧酸素塊の分布状況は, 観測値と同じであった.したがって, 実際の湖流も今回のシミュレーション結果のようになるのではないかと著者らは推測した.
  • 竹内 康, 江向 俊文, 姫野 賢治, 牧 恒雄, 斎藤 正弘
    2005 年2005 巻239 号 p. 481-489
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    アスファルト舗装の疲労ひび割れには, アスファルト混合物層下面から表面に向けて進行するBottom-upのひび割れと, 舗装表面から進行するTop-downのひび割れがある.従来, 農道のような舗装厚の薄い軽交通のアスファルト舗装では, 亀甲状ひび割れにより明らかとなるBottom-upひび割れが支配的であると考えられてきた.そのため, 車輪走行位置に沿つて縦断方向に発生するTop-downのひび割れの調査および解析は重交通対応の一般国道や高速道路の舗装においてのみ検討されてきた.
    本研究では, 福島県内の補修履歴のない広域農道のアスファルト舗装を対象に, コア抜き取り調査および交通量調査等を実施し, 当該地区におけるアスファルト舗装のひび割れは舗装表面から進行するTop-downのひび割れであることを確認した.また, 疲労解析により軽交通の場合であつてもBottom, upよりもTop-downのひび割れの方が生じやすいことを明らかにした.
  • 吉本 周平, 宇波 耕一, 河地 利彦
    2005 年2005 巻239 号 p. 491-496
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    余水吐を有する溜池が豪雨時に発揮する洪水緩和機能を評価するための新しいアプローチを提案する.まず, 溜池集水域における流出過程を, 離散時間領域における伝達関数としてモデル化する.モデルのパラメータは, 降雨強度と流出流量の観測データから同定する.流出現象の再現性を改善するよう, 同定モデルの最適化を行う.最適化モデルは, 流出分離モジュールとARX (外部入力のある自己相関モデル) モジュールからなる混合型モデルである.モデルは, 周波数領域における伝達関数に変換され, 単純な線型貯留型物理モデルに関連付けられる.一方, 溜池を通過する洪水のダイナミクスは, 水収支および余水吐の水理特性を表す線型システムの枠組みにおいて考察する.流域からの流出流量は溜池への流入流量に等しく, また, 余水吐からの越流流量が流出流量であるが, これらを表す伝達関数が溜池の洪水緩和機能評価に用いられる.提案されたアプローチの有効性は, データ計測の行われている実在の溜池への適用を通じて確認される.その溜池が妥当な周波数の範囲において流域からの洪水を緩和することが示される.
  • 淺井 修, 伊藤 健吾, 千家 正照
    2005 年2005 巻239 号 p. 497-504
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論では, ハウス多段栽培におけるトマト体内の水分動態と果実肥大について検討した.主枝の茎内流は24時付近まで確認された.多段栽培では草丈が大きく着果数も多いことから, 貯留水分回復と果実肥大のため日没後も茎内流が確認されたと考える.葉柄と果梗の茎内流量は通導組織の連結により正負対称の変化を示した.日射量が多い日は, 蒸散量の増加に伴い果実内部の水分は果実外部へ流出した.また, 夕刻から翌朝にかけて20時頃をピークとする茎内流により流出量を上回る水分が果実へ流入した.これらのことはひずみ量の増減からも確認できた.ひずみ量は果梗の茎内流量とやや正の相関があり, 気象要素との相関は小さかった.以上より, 晴天日の夕刻灌水は能動的な吸水と水分移動により果実への流入量が急激に増加することが予想される.
  • 福田 信二, 平松 和昭, 森 牧人, 四ヶ所 四男美
    2005 年2005 巻239 号 p. 505-511
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    一般に, 魚類の生息環境としては, 流水要素の多様性, 水質要素の多様性および空間要素の多様性が重要な形成要因となり, これらに対する魚類の応答行動として良好な棲み場所環境が決定される.本研究では, これらの環境因子の中から水深因子, 流速因子および遮蔽因子を取り上げ, メダカ (Oryzias latipes) の生息場選好性を農業用水路において実施したフィールド調査の結果を基に検討した.魚類が本質的に有する応答行動のあいまいさを積極的に捉えファジィ推論を導入し, 遺伝的アルゴリズムを用いた最適値探索により選好強度を定式化した.その際, フィールド調査における環境因子の測定値に含まれる不正確さをファジィ数で表現し, 明示的にモデルに組み込んだ.フィールド調査の結果を用いて構築したファジィ選好強度モデルによりメダカの空間分布を良好に再現することができた.
  • 永井 明博, 足立 忠司, 沖 陽子, 近森 秀高
    2005 年2005 巻239 号 p. 513-520
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    法面被覆植物が表面流出に及ぼす影響を明らかにするため, 流出試験区での3年間の水文観測とその間の138出水の解析を行った流出試験区 (幅2m, 長さ5m) を5区設け, その内の4区は被覆植物が植栽された植生区とし, 残りは対照区としての無植生の裸地区とした.法面被覆植物としてはギョウギシバ, ダイコンドラ, ヨモギを選んだ.得られた結果をまとめると次のとおりである.
    (1) 3年間の総流出高でみると, 裸地区に対する植生区の比は0.26~0.39であった.出水ごとにみても, 総雨量が30~40mmを超える場合, 植生区の総流出量は裸地区のそれよりも少なくなっていた.さらに, ピーク付近の流量で評価しても, 裸地区の値に対する植生区の値の比は0、24~0.35となっていた.このようにいずれの側面から評価しても, 植生による表面流出軽減効果が認められた.
    (2) 試験区の雨水流出現象を表現するため, 浸入現象を考慮した流出モデルを提示し, このモデルにより実測ハイドログラフがよく再現されることを実証した.モデルで表現される最終浸入能を比較すると, 植生区の値は裸地区の値の約4倍となっており, 植生区の流出モデルは裸地区のそれに比べて雨水が浸入しやすく, 表面流出は発生しにくい構造となっていた.
  • 河端 俊典, 大石 順司, 中瀬 仁, 毛利 栄征, 内田 一徳
    2005 年2005 巻239 号 p. 521-528
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地盤と埋設管の動的相互作用について, 乾燥地盤における繰返し単純せん断に対する個別要素法解析より, 単純せん断を受ける埋設管の浮上メカニズムについて検討した.地盤内に発生する力, 管周辺地盤の間隙比, 周辺地盤粒子の管に対する相対変位より検討した.その結果, 周辺地盤を構成する土粒子と同じ密度を持つ埋設管モデルの方が, 径の小さな土粒子モデルより浮上しやすいことが明らかになった.また, 浮上メカニズムとして, 周辺地盤から力を受けた埋設管が水平に変位する際に, 下部地盤より反力を受けることにより, 管は浮上することが明らかになつた.さらに, これらの挙動に関して, 管底部への粒子の回り込みについて埋設管周辺地盤の間隙比の変化から考察した.
  • 秋吉 康弘, 稲垣 仁根, 竹下 伸一, 小山田 正幸
    2005 年2005 巻239 号 p. 529-537
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    開水路の路線選定を行う場合, 路線の周囲の地形が狭小, 急峻かつ屈曲した場所では, 水路の縦断・平面線形を鋭角に屈折させた急流工方式を採用しなければならない.そこで, 著者らは, 開水路の屈曲点においても, 流水制御が可能となるように, 水路の側壁を円弧状 (210°) に設定して, 最大屈曲角度45°の範囲であれば, 屈曲部に流入する高速流が円弧壁に沿ったらせん流に移行して流下できる「らせん流水路」を開発した.本報では, らせん流水路の屈曲角度を大きくした65°と90°の2種類について, ため池の洪水吐への適用を考えた水理模型実験を行い, 安定した流水制御が可能であることを示した.さらに, 技術者がらせん流水路を設計する場合を想定し, これまでの研究成果に基づいて, その水理設計法について記述した.
  • 鈴木 哲也, 池田 幸史, 友田 祐一, 大津 政康
    2005 年2005 巻239 号 p. 539-540
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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