抄録
法面被覆植物が表面流出に及ぼす影響を明らかにするため, 流出試験区での3年間の水文観測とその間の138出水の解析を行った流出試験区 (幅2m, 長さ5m) を5区設け, その内の4区は被覆植物が植栽された植生区とし, 残りは対照区としての無植生の裸地区とした.法面被覆植物としてはギョウギシバ, ダイコンドラ, ヨモギを選んだ.得られた結果をまとめると次のとおりである.
(1) 3年間の総流出高でみると, 裸地区に対する植生区の比は0.26~0.39であった.出水ごとにみても, 総雨量が30~40mmを超える場合, 植生区の総流出量は裸地区のそれよりも少なくなっていた.さらに, ピーク付近の流量で評価しても, 裸地区の値に対する植生区の値の比は0、24~0.35となっていた.このようにいずれの側面から評価しても, 植生による表面流出軽減効果が認められた.
(2) 試験区の雨水流出現象を表現するため, 浸入現象を考慮した流出モデルを提示し, このモデルにより実測ハイドログラフがよく再現されることを実証した.モデルで表現される最終浸入能を比較すると, 植生区の値は裸地区の値の約4倍となっており, 植生区の流出モデルは裸地区のそれに比べて雨水が浸入しやすく, 表面流出は発生しにくい構造となっていた.