農業土木学会論文集
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高分子電解質によるコロイド粒子の凝集機構に関する研究
架橋vs.荷電中和
青木 謙治足立 泰久
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2006 年 2006 巻 245 号 p. 747-753

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抄録
カチオン性の高分子凝集剤 (以下高分子電解質) による負に帯電したポリスチレンラテックス (PSL) 粒子の凝集に対し, 凝集過程とそれに対応するPSL粒子の電気泳動移動度の経時変化を測定して, 高分子電解質の作用機構を架橋作用と荷電中釉作用に基づいて検討した.実験は, 高分子電解質の濃度と分子量, 溶液のイオン強度を変化させて行った.高分子の添加量をPSL粒子荷電を中和する量よりも過剰にした場合 (0.5mg/l), 初期の凝集速度が塩による急速凝集の凝集速度よりも大きくなり, 約数秒で凝集の進行は停止した. 初期の凝集速度の増加は, 高分子電解質の吸着によってPSL粒子の衝突半径が増加していることを意味し, この場合の凝集が高分子電解質の架橋作用により誘発されることを示している.凝集速度の増加は高分子電解質の分子量と溶液のイオン強度に依存し, 分子量が大きいほど, また同じ分子量ではイオン強度が低いほど大きかった. 高分子の添加量をPSL粒子荷電を中和する量に調整した場合 (0.075mg/l), 凝集初期段階では凝集速度が遅いが, 攪拌を続けると凝集速度が塩による急速凝集速度よりも大きくなって凝集が進行した.また, 凝集過程に対応するPSL粒子の電気泳動移動度から, 凝集の進行時には架橋作用と同時に, PSL粒子と反対符号の電荷を持つ高分子電解質の吸着によりPSL粒子荷電が中和され, PSL粒子の凝集が誘発されることが明らかになった.架橋作用の寄与は溶液のイオン強度が低いほど顕著であった. 高分子の添加量をPSL粒子荷電を中和する量よりも少なくした場合 (0.025mg/l), 0.075mg/lのときと同様に, 攪拌を続けると数十秒経過してから凝集の進行が開始した.しかし, 凝集速度が塩による急速凝集よりも大きくならなかった.
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