農業土木学会論文集
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2006 巻, 245 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 堀 雅文, 田野中 新, 若林 洋, 小島 紀徳
    2006 年2006 巻245 号 p. 683-689
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    黒部川出し平ダムからの排砂により, ダム湖に堆積した土砂が黒部川に排出される。この土砂が用水に混ざり, 圃場に流入した場合の水稲の生育に与える影響を検討するため, 黒部川扇状地内の圃場で実験を行った.出し平ダムから採取した土砂を, 圃場に設置した試験区に散布し, 水稲の生育, 収量等を調査した.1993年度は, 苗の活着期及び穂ばらみ期への影響を調査するため, 5月及び8月に土砂を散布した.1994年度は, 活着期への影響を再度調査するため, 5月に土砂を散布した.1993年度の実験では, 活着期に散布した場合は, 茎数には土砂散布の影響はあったが, 収量については影響が見られなかった.穂ばらみ期に散布した場合では草丈, 茎数, 収量のいずれにも影響はなかった.また, 1994年度の実験では, 圃場に流入する用水の土砂濃度が10,000mg/l以下であれば, 生育状況, 水稲の養分, 跡地土壌の化学特性, 収量のいずれについても影響のないことが明らかになった.
  • 茨城県報恩寺地区を事例として
    谷口 智之, 佐藤 政良
    2006 年2006 巻245 号 p. 691-700
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    耕起乾田直播水田 (乾直田) における減水深の実態と構造を明らかにするため, 同一灌漑地区内の乾直田と移植田を対象に, 1999年からの4年間で連続水収支観測を行った.その結果, 以下が明らかになった.1) 浸透促進のために耕盤破砕を実施した年と翌年の年平均減水深を比較した結果, 減水深は約20mm/d減少しており, 耕盤破砕の効果は急激に低下した.2) 本乾直田では, 耕盤破砕効果低下後の減水深は移植田とほとんど差のない値となった.3) 昼間灌漑によって湛水位と排水路水位が1日内に変化する環境条件の下で, 降下浸透が排水路水位低下時に閉鎖系から開放系に切り替わる現象が確認された. 減水深は, 閉鎖系では主に排水路水位に支配され, 開放系に切り替わった後は湛水位と直線的な関係を持った. また, 湛水位と減水深の関係から, 湛水時間の経過に伴って透水性が低下していく様子が確認された.
  • 低正圧間断灌漑の実用性と負圧連続灌漑による根巻き防止効果
    岩間 憲治, 金木 亮一, 谷川 寅彦, 矢部 勝彦
    2006 年2006 巻245 号 p. 701-705
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    素焼き多孔質管を直列に配した地中灌漑法に関して, 複数の条件で実用性を検証した.まず, 管内の設定水位を0.03mに設定したまま1日あたりの給水時間が30分の間断灌漑でトマトを栽培した.その結果, 管周辺の土壌水分環境に応じて給水量は0.5-1.2L・d-1・株-1の間で変化し, 作物生長も良好であった.次に, 管内水圧を負圧に維持した状態で, 防根シートが給水特性にどのように影響するか検証した.ここでは防根シートを用いた試験区と用いない試験区を設定して供試作物としてナスを栽培した.その結果, 両試験区とも状況に応じて設定水位を-0.10--0.17mの間で変化させたが, 茎葉繁茂・果実肥大期における平均給水量は1.9L・d-1・株-1で生産量もほぼ同じであり, 防根シートが存在しなくても給水量が大きく減少することはなかった.また, トマトもナスも必要給水量が2-3L・d-1・株-1であることを考慮すると節水効果が期待できた.
  • 岩間 憲治, 谷川 寅彦, 金木 亮一, 矢部 勝彦
    2006 年2006 巻245 号 p. 707-712
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    素焼き多孔質管を用いた地中連続灌漑法について, 管内を常時低正圧もしくは負圧に設定した場合の適用可能性を評価するため, プリンスメロンを用いて栽培試験を実施した.また, 低コストで圃場への設置の容易な地中連続灌漑法として, 側面に孔を設けて透水性不織布で塞いだ送水部一給水部一体型のビニールホースを試作して, 同様に栽培試験を実施した.その結果, 給水量は正圧区, 負圧区, ホース区の順で05, 0.6, 0.6L・d-1・株-1, 水利用効率が28.0, 21.9, 22.7L・kg-1であり, 多孔質管と同様に不織布によるホース給水でも地中灌漑が可能であることが示された.ただし, 正圧区, ホース区では, 茎葉繁茂期で水量過多, 着果肥大期で水量不足が顕著であり, 頻繁な水量調整が必要であった.さらにホース区では不織布の目詰まりや設定水位に敏感である点が給水管理を難しくしており, その対策が望まれた.
  • 平野 真弓, 黒田 久雄, 加藤 亮, 中曽根 英雄
    2006 年2006 巻245 号 p. 713-720
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    光を照射し藻類などの有機物生成を促す明条件と, 遮光した暗条件下との窒素除去能力を比較する実験を行った.土壌100gと試料水300cm3 (NO3-N: 15-17mg・L-1) をビーカー内に入れ, 25℃ のインキュベータ内で光を連続照射した.1週口のみ毎日採水を行い, 1週間毎に試料水の入れ替えと分析を行った.これを12週問繰り返し行った.1週目の日変化から, 明条件と暗条件のNO3-N除去係数の差は1日目から生じ, その差は約2.3倍となることがわかった.12週間の変動から, 明条件のNO3-N除去係数が約0.003-0.005m・d-1で安定し, 暗条件は約0m・d-1まで低下した.明条件のCOD濃度増加量は, 6-10mg・L-1と高く12週間ほぼ一定量を示し, 実験後の土壌の窒素量と炭素量が増加したことから, 光による有機物の発生が確認できた.以上より, 光を当てることで有機物を持続的に発生させることができ, 窒素除去能力の持続1生に影響を与えることがわかった.
  • 濱 武英, 中村 公人, 三野 徹
    2006 年2006 巻245 号 p. 721-727
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 琵琶湖沿岸に広がる低平地水田流域に実施された循環灌漑による濁水負荷の流出削減効果を評価した.結果として, 代かき期の削減効果が大きいことが示された.代かき期の循環灌漑では, 従来の逆水灌漑に比べ, 最大で152 kgha-1 (2004年), 415 kgha-1 (2005年) の濁水負荷の流出が削減されていたものと推定された.このとき, 濁質の水田への還元量は, それぞれ37kg ha-1および204kg ha-1であった.一方で, 削減効果は気象条件や施設管理に大きく左右されることが示唆された.
  • 山下 祐司, 足立 泰久
    2006 年2006 巻245 号 p. 729-735
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    流動電位法でゼータ電位を求めたガラスビーズ及び鹿沼土を飽和充填したカラムに, 電気泳動法でゼータ電位を測定したポリスチレンラテックス (PSL) 粒子懸濁液を様々な塩濃度で流し入れ, その捕捉割合をコロイド粒子及びカラム充填材の表面荷電特性に照らし合わせて解析した.ゼータ電位測定より, ガラスビーズ及びPSL粒子は負に帯電し, 溶液の塩濃度の低下に伴ってその絶対値が増大することが確認された. 一方, 鹿沼士では, 塩濃度によらずほぼゼロで変化しないことが明らかとなった. この結果は, カラム通過実験において, ガラスビーズよりも鹿沼土でのPSL粒子の捕捉割合が大きいことと対応しており, 土粒子表面の電位が低いことが鹿沼土の効率的な捕捉能を発現する機構であることが示された.また, 走査型電子顕微鏡による鹿沼土の表面形状の観察から, PSL粒子と同スケールの凹凸が確認され, 鹿沼土の高い捕捉能に寄与していることが示唆された.
  • 泉 完, 伊東 竜太, 矢田谷 健一, 東 信行
    2006 年2006 巻245 号 p. 737-746
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    青森県の一級河川岩木川本流の河口から約55km上流に設置されている岩木川取水堰 (幅150m) の全面越流型階段式魚道において魚類等の現地遡上調査と魚道内の水理特性を検討した.全面越流の状態で魚道を遡上した魚類等は20種類おもにウグイ (58%), アブラハヤ (24%), アユ.オイカワ (5%) でサケも遡上した.魚道を利用する魚類等の1日における遡上数が多い時間帯は, 河川水温の高い正午過ぎから20時頃までであり, 青森県内の中流部に位置する魚道の既往の遡上調査結果と極めて類似する結果を示した.一方, 遊泳魚は潜孔も利用することがわかり, 潜孔は魚類等の有効な通過施設であることがわかった.魚道プール内の水理特性について, 3次元合成ベクトル流速と2次元合成ベクトル流速分布で流況を明らかにした.プール中央部では特有の大きな回転流域が形成され, その空間域の流速変動は合成標準偏差が10-15cm・s-1と他の領域に比較して小さい静穏領域を形成していることがわかった.
  • 架橋vs.荷電中和
    青木 謙治, 足立 泰久
    2006 年2006 巻245 号 p. 747-753
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    カチオン性の高分子凝集剤 (以下高分子電解質) による負に帯電したポリスチレンラテックス (PSL) 粒子の凝集に対し, 凝集過程とそれに対応するPSL粒子の電気泳動移動度の経時変化を測定して, 高分子電解質の作用機構を架橋作用と荷電中釉作用に基づいて検討した.実験は, 高分子電解質の濃度と分子量, 溶液のイオン強度を変化させて行った.高分子の添加量をPSL粒子荷電を中和する量よりも過剰にした場合 (0.5mg/l), 初期の凝集速度が塩による急速凝集の凝集速度よりも大きくなり, 約数秒で凝集の進行は停止した. 初期の凝集速度の増加は, 高分子電解質の吸着によってPSL粒子の衝突半径が増加していることを意味し, この場合の凝集が高分子電解質の架橋作用により誘発されることを示している.凝集速度の増加は高分子電解質の分子量と溶液のイオン強度に依存し, 分子量が大きいほど, また同じ分子量ではイオン強度が低いほど大きかった. 高分子の添加量をPSL粒子荷電を中和する量に調整した場合 (0.075mg/l), 凝集初期段階では凝集速度が遅いが, 攪拌を続けると凝集速度が塩による急速凝集速度よりも大きくなって凝集が進行した.また, 凝集過程に対応するPSL粒子の電気泳動移動度から, 凝集の進行時には架橋作用と同時に, PSL粒子と反対符号の電荷を持つ高分子電解質の吸着によりPSL粒子荷電が中和され, PSL粒子の凝集が誘発されることが明らかになった.架橋作用の寄与は溶液のイオン強度が低いほど顕著であった. 高分子の添加量をPSL粒子荷電を中和する量よりも少なくした場合 (0.025mg/l), 0.075mg/lのときと同様に, 攪拌を続けると数十秒経過してから凝集の進行が開始した.しかし, 凝集速度が塩による急速凝集よりも大きくならなかった.
  • 土原 健雄, 井伊 博行, 石田 聡, 今泉 眞之
    2006 年2006 巻245 号 p. 755-765
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    釧路湿原を流れるチルワツナイ川流域に分布する湧水 (噴火口型・噴砂丘型) を形成する地下水の流動特性を, 地層及び水理水頭分布, 安定同位体比及び放射性同位体測定により明らかにし, その涵養域の推定を行った. 地層及び地下水水理水頭分布より, チルワツナイ川流域の湿原下には鉛直上向きの地下水の流れが存在し, その流れは粘土層の断層付近の亀裂を通じて湧出していると推定された. チルワツナイ川流域の地表水, 地下水及び釧路湿原に流入する河川水の水素, 酸素の安定同位体比の分布より, チルワツナイ川流域に多数分布する湧水は, 地形により識別される流域より上流に涵養域を持つと推定され, 釧路湿原の湧水環境の保全・管理を考える際には, 広域流動系の地下水の影響を考慮する必要があることが明らかとなった.また, チルワツナイ川流域の湧水及び湿原下の地下水のトリチウム濃度は自然発生レベルよりはるかに低く, 湿原内の湧水を形成する地下水は50年以上前の降水が涵養され循環してきたものであることが示された.
  • 佐藤 勝正, 佐藤 政良
    2006 年2006 巻245 号 p. 767-775
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    日本の協力による「灌漑小規模農業振興計画」は, ガーナ国灌漑開発公社 (GIDA) が管轄する2ヶ所の灌漑事業地区, アシャマンとオチェレコをモデル地区とし,「参加型灌漑管理 (PIM) を基本とする営農システムの確立」と「他の灌漑事業地区の営農システム改善のためのガイドラインと戦略の策定」を目的に1997年から7年間実施された. 援助の過程で, モデル地区の農民は, 異なる灌漑管理体制を選択し, GIDAの介入を拒否したアシャマン地区とGIDAの関与を受け入れたオチェレコ地区は, 水利費徴収率と施設管理において対照的な違いを見せた.本稿は, この2地区を対象に水管理における政府と農民組織の役割について検討を行い, 両地区ともPIMを実施する上では, 政府との適切な役割分担, 協力が必要であること, また援助終了後の農民組織の自立発展性評価においても, こうした視点が重要であることを明らかにした.
  • 竹内 康, 岡澤 宏, 江向 俊文, 馬場 竜介, 牧 恒雄
    2006 年2006 巻245 号 p. 777-782
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 積雪寒冷地における効率的なロードヒーティングシステムを構築するための基礎データ収集を目的として, 新潟県妙高市立姫川原小学校の校庭にウェザーステーションを設置し, 校庭内に敷設されている簡易アスファルト舗装体内の積雪前後の温度変化を測定した. そして, この測定データを用いて一次元非定常熱伝導解析を実施したところ, 舗装周辺からの水分浸透による地盤の温度拡散率の変化が地盤内の時系列温度変化に影響を及ぼしており, 簡易アスファルト舗装において温度分布を推定するためには地盤内の水分変化を把握する必要があることがわかった.
  • 石神 暁郎, 長束 勇, 渡嘉敷 勝, 森 充広
    2006 年2006 巻245 号 p. 783-789
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    コンクリート製開水路および水路トンネルの目地部における効果的な漏水防止対策として, 目地材におけるゴム弾性の活用とその断面形状により, 目地が伸縮しても目地材表面に引張応力を発生させず, 高耐久化が図られることを特長とする目地補修工法を開発した. 先ず, 農業用コンクリート水路の目地補修工法に要求される性能について整理し, 性能確認試験方法を検討・選定した. 次に, 選定した試験方法による試験を行い, その性能を評価・確認した. その結果, 開発した目地補修工法は, 少なくとも0.10MPaの水圧抵抗性を有し, また, 2.0MPaの引抜き抵抗性, 1.2MPaの押抜き抵抗性を示した. さらに, 耐候性・促進耐候性試験および耐酸性・耐アルカリ性試験より, 優れた耐久性を示すことが確認された.
  • 多田 明夫, 田中丸 治哉, 畑 武志
    2006 年2006 巻245 号 p. 791-804
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    集水域からの流出負荷量はこれまで様々な方法で推定されてきた. しかしながら, 我が国では負荷量推定値の確からしさについての議論は十分になされておらず, 推定値の相互比較や利用が困難であった. 米国では推定法と精度についての研究・議論が継続的になされており, 特に1998年以降のTMDLsの実施に伴い, その重要性が広く認識されてきている.本研究展望ではこれまで主に米国で行われてきた集水域からの流出負荷量の推定法とその確からしさについての研究を概観し, 負荷量計算法とサンプリング戦略の2つの観点から最も偏りのないと評価されている負荷量推定法を整理・紹介し, 流出負荷推定量の不確かさの観点から, 有望な推定法を提示するものである.
  • 守山 拓弥, 藤咲 雅明, 水谷 正一, 後藤 章
    2006 年2006 巻245 号 p. 805-806
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 山岡 賢, 柚山 義人, 中村 真人
    2006 年2006 巻245 号 p. 807-808
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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