農業農村工学会論文集
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有明海の潮汐及び潮流の変化とその要因に関する考察
白谷 栄作桐 博英高木 強治濱田 康治丹治 肇中田 喜三郎
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2007 年 2007 巻 252 号 p. 737-748,a3

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抄録

有明海の潮汐は, 湾口の口之津や外海の枕崎と同様に1980年代後半から減少傾向を示している.増幅率をみると, 湾口の口之津に対する湾奥の大浦では1970年から1980年代半ばまで上昇し, その後2000年にかけて減少している.また, 外海からの潮汐波の進行で上流側の枕崎に対する大浦の増幅率は, 大浦のA0成分の変動と連動しているように見える.これらの変化要因について平均海面の変動や諌早湾干拓事業の影響が指摘されているが, 1970年代以降の潮汐変化を合理的に説明できるものとはなっていない.また, 数値シミュレーションで各要因の影響度合いが検討されているが, 統一的な結論を得るには至っていない.一方, 潮流については, 現地観測によって島原半島沿いに高流速帯が存在することや諌早湾口の流況の複雑さが定性的に明らかにされている.しかし, 潮流変化の定量的評価については, 数値シミュレーションや水理模型実験による解析結果から, 諌早湾干拓事業, ノリ養殖, 熊本新港等の影響度合いが報告されているものの, 数値シミュレーションの解析精度の問題等が指摘されており, 影響の範囲や程度の議論は尽くされていない.今後は, 精度の高い潮流観測を行い, データの蓄積を図るとともに, 局所流や密度流の再現性と精度の高い数値モデルや水理モデルの開発を行い, 潮流変化と水質, 底質その他環境変化との因果関係の解析へつなげていく必要がある.

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© 社団法人 農業農村工学会
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